ひもの屋〈干物〉 矢口商店について
当店は主に市場をお客様とした卸売り、しかも地元のスーパーには置いてもらえていなかったので、東京や千葉など遠距離の卸売りを専門的に行っていたので、個人のお客様を相手に小売りすることがほんの数年前まではほとんど無かった。 その当時は、当店があることを知らせる看板というものも無かった上に、工場の場所も道路より見えづらい場所にあった為、同業者でさえも当店の場所を知らないと言われることが多々あった。
そんな当店に、干物を買いに来る個人のお客様が年々増えている。 相変わらず場所は分かりづらく、当店へ来る途中何度も当店の前を通り過ぎ、近所のコンビニで当店の場所を訪ねながら、ようやく到着出来たという。 そんな大変な思いをして当店へ足を運んでくれるお客様が最近増え続けている。
以前であれば、市場流通のみで小売りはしていなかったので、地元で当店を知ってもらう機会がほとんどなかったし、10年ほど前までは、魚の水揚げが日本有数の為、
『魚は買うものではなく貰うもの。』
そう言われることが多々あったので、自分でも店に買いに来るお客さんが近所にも居るとは考えていなかった。ちょうどその頃、あるスーパーでの店頭販売に出かけたときの出来事がそれまでの考えを改めるきっかけとなった。
新装開店のイベントとして、当店の干物を売って欲しいとのご依頼を受けた。
持参した干物は 1000 枚超、開店と同時にいらっしゃいませの言葉を発する余裕もなく完売。急きょ200枚弱を 追加したものの即完売。2時間も係らずに終わってしまった。スーパーのバイヤーや卸売り業者も驚いていたの で、当時の記憶はとても印象に残っている。当然私自身も驚いたし、うちのサバはこんなに売れるのか?と素直に嬉しく思った。 それと同時にこれだけ支持して頂けるのであれば、地元のお客さんにも同じように喜んでもらえるかもしれない と思い始めた。
その後、地元産業祭で当店の干物を売るようになった。はじめはスーパーで買った方が安いとか、どこがどう 違うのか分からない等、買ってもらうのにとても苦労した。 しかし、回を重ねるごとに当店の干物が認知され始め、今年に限っては開店と同時に完売してしまった。